お酒と運転について:前編(ショーファーサービスのコラム 2021.9.1)
暑い日々が続いていますね。
みなさんオリンピック東京2020大会は、いかがだったでしょうか。
日本は金メダル27個、銀メダル14個、銅メダル17個を獲得しました。
今は、東京2020パラリンピック競技大会の真っ只中。多くの選手が活躍していますね。
今回の大会は、ほぼ全競技が無観客での競技となったため、テレビやインターネット中継の画面越しにお酒片手に観戦・応援されていたのではないでしょうか。
さて、今回は、お酒と運転の関係について取り上げたいと思います。
飲酒運転が減らない
オリンピックが始まる前の6月下旬に千葉県八街市である事故が発生しました。
下校途中の小学生の列に飲酒運転のトラックが突っ込み、児童5人が死傷するという事故で、トラックの男性運転手の呼気から基準値を超えるアルコールが検出、飲酒の影響での居眠り状態での事故だったため、現在、危険運転致死傷罪で起訴されています。
前回、運行管理者の講習の話題を上げましたが、講習日が事故発生後間もないこともあり、飲酒運転に関する講義の中にこの事故に関連した話もありました。
飲酒運転による事業用自動車の交通事故について、2019年は前年比42.5%の件数増加となり、監督官庁の国土交通省自動車局から各関係団体に対し飲酒運転の防止の徹底を促す通達が発出されているという話を伺いました。
また、現在、国土交通省より『事業用自動車総合安全プラン2025』が策定され、事故削減目標のうち全体目標の一つに「飲酒運転ゼロ」を掲げているという話がありました。
※参考:国土交通省『事業用自動車総合安全プラン2025』
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/news/data/anzenplan2025/about.pdf
警察庁公表のデータによると、2020年中の飲酒運転による交通事故件数は、2,522件で前年比-525件、うち死亡事故件数は159件で前年比-17件と減少しているものの、2008年以降下げ止まり傾向にあります。
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/info.html
八街市の事故後の関連報道にて、千葉県内での飲酒運転の摘発件数について2021年6月末時点の摘発件数は、昨年同期より83件(16.5%)多い586件に上っているという報道がされています。
この報道を見る限り「自分は捕まらない」「運転しても大丈夫」という意識があるのではないかと思われます。
飲酒運転に関するデータ
警察庁の発表によると
2020年の飲酒有無別の死亡事故率(死亡事故率=死亡事故件数÷交通事故件数×100%)を見ると、飲酒なし:0.78%に対し、飲酒あり:6.30%と8倍以上の差があると示しています。
アルコールには麻痺(まひ)作用があり、脳の働きに作用します。
まず理性を司る大脳新皮質を麻痺させます。アルコール摂取量が増えると、本能や感情を司る大脳辺縁系や運動を司る小脳にも麻痺を与えます。そして脳の麻痺により、以下の運転への影響が出ます。
①動体視力の低下、視野狭窄の視力の影響
②注意力・集中力・判断力の低下
③理性・自制心の低下による速度増加、乱暴運転
④平衡感覚の低下による蛇行運転
⑤反応時間・運動機能の低下
⑥居眠り
反応時間については、科学警察研究所より調査研究結果が出されています。
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/insyuunten/kakeiken-kenkyu.pdf
かいつまんでお伝えすると、酒に強い人、酒に弱い人合計43名による呼気中のアルコール濃度別(なし、低:0.12㎎/ℓ程度、中:0.21㎎/ℓ程度、高:0.30㎎/ℓ程度)の8パターンで、「やや単純な判断」と「やや複雑な判断」について運転シミュレータを使い反応時間の測定をした実験です。
実験の結果、反応時間について
・やや単純な判断に関する反応時間の平均値は
酒に弱い人の場合 酒に強い人の場合
なし 0.51秒 0.51秒
低 0.52秒 0.53秒
中 0.54秒 0.54秒
高 0.56秒 0.57秒
・やや複雑な判断に関する反応時間の平均値
酒に弱い人の場合 酒に強い人の場合
なし 0.66秒 0.69秒
低 0.71秒 0.71秒
中 0.73秒 0.75秒
高 0.76秒 0.78秒
というデータが出ています。
『なし』と『高』では、最大で0.1秒の差が出ています。0.1秒というと、まばたき1回くらいの時間になります。
ちなみに時速40㎞で0.1秒進む距離は、だいたい『1.1m』くらいです。
考察の部分でも、アルコールの摂取量により反応が遅くなるということが示されています。
あくまでも、運転シミュレータを使った実験データですので、年齢、天候、時間帯、道路状況によっては、もっと反応速度が遅くなるのではないかと思います。反応が遅くなれば、制動距離や時間が多くなることになり、事故のリスクが高まり、被害が甚大化することにつながります。
いったん、一区切り
ショーファーサービスではドライバーの入社時研修のうち、座学研修の期間に飲酒運転に関する講義を行います。
自動車を運転する者として、これから『運転を仕事とする者』として飲酒運転という行為のリスクを再認識してもらうためです。
今回は、アルコールによる運転への影響についての話題でしたが、この『お酒と運転』について、もう少し掘り下げたいところですが、紙面が長くなってしまうので、続きは次の回にしたいと思います。
(後編に続く)