『車間距離は大切』を再確認する事例(ショーファーサービスのコラム 2022.6.22)
関東地方が梅雨入りしてからしばらく経ちました。
道端に咲く紫陽花が鮮やかな色を見せています。
さて、今回のコラムは、今年5月に行われた自動車レースで起きたクラッシュ事故を挙げます。その事故を例に挙げ、車間距離の大切さをお伝えできればと思います。
適切な事例ではないかもしれませんが、大きなクラッシュ事故でしたので、今回のコラムの材料にしたいと思います。
『それ』は、2022年5月4日、富士スピードウェイで起こった…
2022年5月4日、静岡県小山町にある富士スピードウェイ(全長 4.563km)。
その日、このサーキットでは、自動車レースの1つSUPER GTの2022年シリーズ第2戦の決勝レース(競技周回:100周)が行われていた。
レースは、44周目に発生したクラッシュ(衝突事故)による中断を経て、53周目に通常競技再開、トップ車両が59周目に入った直後、富士スピードウェイの名物1.4㎞のメインストレートの後半のところで、『それ』は起きた。
トップを走行中の39号車、それに3号車、37号車が数珠つなぎ状態で争っている場面、さらに39号車の右前方には、トラブルによるスロー走行中の車両が走行していた。
コースのピット側を、トップの3台は、290km/h前後、スロー走行中の車両は約130km/h程度(※)で走行していた。
(※ auto Sport web 2022.05.26 13:42更新のニュースより)
スロー走行中の車両を39号車が左側によけた直後、その後方3・4mを追随する3号車が、スロー走行車に対して接触回避のため、左にステアリングを切った瞬間。
3号車は、コントロールを失いそのまま左サイド(観客席側)のガードレールにそのまま衝突。その衝撃は凄まじく、車両はドライバーを守るモノコック構造部分以外原型を留めないくらいにバラバラになってしまっている。
このシーンについては、オンライン動画共有プラットフォーム『YouTube』のSUPER GT公式チャンネル、『SUPER GT Official Channel』サイトの
『富士決勝ダイジェスト GT500 上位2台のペナルティにより、3位チェッカーのARTA NSX-GTが優勝!』
という動画の2分45秒以降の映像を確認できる。
これだけ大きなインパクトの事故にもかかわらず、安全なモノコックの恩恵でドライバーには一切怪我がなかった。その後、精密検査を経て復帰し、次戦でドラマチックな復活劇を演じての完全勝利というのは、なんと神がかった物語かと思う。
これを公道に置き換えたとしたら・・・
このシーンにおける事故発生の流れは、
① 1台目(39号車)と2台目(3号車)が高速度で走行していた。
② 1台目と2台目との車間距離は3・4m程度しかなかった。
(39号車・3号車の全長は約4.7m。そこから映像で推測)
③ 1台目のさらに右側前方に、低速走行の車両(障害物)がいた。
④ 障害物を避けるため、1台目が左前方に動いた。
⑤ 直後、2台目の前方の視界がひらけたと同時に、急に現れた障害物を避けるために、回避行動(急ハンドルとブレーキ)を行ったが、コントロールを失い、観客席側のガードレールに衝突した。
と整理されます。
このシーンを、高速道路(公道)走行中に置き換えてみると、
①2台の乗用車が高速道路を80㎞/h以上で走行していた。
②前後の車の車間は、不十分だった。(例えば、10~15m程度)
③15m前方に路上落下物があった。(例えば、コンクリートブロック・石塊)
④前の車は、それに気が付いて左前方に避けた。
⑤一方で、後方車両は、発見しブレーキ操作と左側に回避操作を行ったが、対応が間に合わずに落下物と衝突した(もしくは、コントロールを失い、左前方の側壁に激突した)。
とすると、想像しやすくなるかと思います。
富士スピードウェイでのクラッシュは、安全を考え、プロフェッショナルなレーシングドライバーによる競技中の出来事として済みますが、公道で起きた場合、人命にかかわる大事故になり得ます。
“車間時間”を意識しよう
適切な事例ではないものの、個人的には安全な車間距離の維持が事故防止につながると感じた場面になりました。
さて、ここからは公道でのルールや車間距離の取り方について触れていきます。
まず、車間距離が不十分な場合、車間距離不保持違反(高速自動車国道等車間距離不保持違反)いわゆる『あおり運転』として、処罰されます。
●道路交通法第26条
車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
違反した場合、罰則について、
5万円以下の罰金(一般道路の場合)
3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金(高速道路の場合)
さらに行政処分については、普通車の場合
反則金6,000円、違反点数1点(一般道路の場合)
反則金9,000円、違反点数2点(高速道路の場合)
となります。
では、「どのような方法で車間距離を取るのが良いのか?」という話になります。
高速道路上では、適宜、『確認基点』の標識を目印にすることで、車間距離の確認はできそうです。しかしながら、一般道の場合「確認基点」の標識は、まず見当たりません。一般道の場合、白線を利用する方法があります。
一般道路の白線が5m、白線と白線の長さが5m
高速道路の場合、白線が8m、白線と白線の長さが12m
に、設定されています。
この距離を覚えて・・・ なんか面倒くさいですね。
そこで、近年は『“車間時間”で測る』というやり方が、JAFや警察や交通心理学会などから推奨されています。
JAFのWEBページ『クルマ何でも質問箱』の『[Q] 走行中の適切な車間距離は?』というページに、車間時間についてわかりやすく説明されています。
※クルマ何でも質問箱(JAF)
https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-drive/subcategory-technique
この方法だと、その場その場で確認できそうです。
最後に、株式会社ショーファーサービスは役員ドライバーに関する会社です。
今回のコラムで、1つ提言するならば、
『運転席から見える前方の視界と後席から見える前方の視界とは異なる』ということです。
運転席に比べて、後席から見える前方の視界は、特に天地に関して狭くなっています。
例えば、信号停止時、運転席からだと、前方車両の後輪の接地面がみえても、後席からだとリアバンパーより上しか見えないことがあります。
そのため、後席に座っている方からすると、前方車両に近づきすぎていると感じることもあるようです。車間を詰めて走行していると、乗客はずっと緊張されているのかもしれません。それは、「快適な移動空間」といえるのでしょうか。
まずドライバーの方は、後席に座れる場合には一度着席してみて、運転席と後席それぞれから見える視界や、前方車両との間隔を直接確認してみてください。その上で、「後席からどのように感じるだろう」という中で車間距離を取るような運転を心掛けてください。
安全運転の心掛けは車間距離から・・・