自動車と環境問題 (ショーファーサービスのコラム 2022.7.14)
6月27日、関東地方での今年の梅雨は、あっという間に終わりました。21日間という観測史上最短だそうです。
そして、体が暑さに順応する前に猛暑日が続き、熱中症になられる方が多数いらっしゃる状況で7月を迎えています。
この猛暑の背景の一つに、環境問題、温暖化の問題が関わってきそうです。
さて、今回は、自動車と環境問題を絡めた話題にしたいと思います。
『BEV』とか 『FCEV』ってなに?
この2・3年で、環境問題に取り組んだ自動車が続々と発表されています。
メーカー各社も『BEV』とか『FCEV』とか色々なタイプの車両が出ていますが、この『BEV』とか『FCEV』とかは何を指すのでしょうか??
各タイプにEVと付くため、基本的に電気モーターを使って走行する自動車を指します。
・HEV(HV)…ハイブリッド車。エンジンとモーターの両方を備え、エンジンで発電して走行用バッテリーに充電しモーターを動かします。
代表例はトヨタ プリウス、日産 ノートe-Power
・PHEV(PHV)…プラグインハイブリッド車。HEVの機能に加えて、外部電源に接続して走行用バッテリーに充電することが可能な自動車
代表例はトヨタ プリウスPHV、三菱 アウトランダーPHEV
・BEV(EV)…バッテリー式電気自動車。外部電力に接続して走行用バッテリーに充電。バッテリーのみで走行する自動車。排気ガスは発生しない
代表例は日産 リーフ、テスラの各車
・FCEV(FCV)…水素自動車、燃料電池自動車。水素から電気を発生させる燃料電池を搭載し、そこで発電された電力でモーターを駆動させる自動車。排出されるのは水
代表例はトヨタ ミライ、SORA(路線バス)、ホンダ クラリティFUEL CELL
これまでは、日本国内では、環境に取り組んだ自動車はHEVやPHEVがほとんどでしたが、欧州の排気ガス規制(ユーロ6以降)や欧州メーカーのディーゼル排出ガス偽装問題をきっかけに進んだカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量実質ゼロに)に向けた取り組みの結果、今後はBEVやFCEVのラインナップが増えてくると思います。
実際に自動車メーカー以外にも、SONYがEVの試作車を発表したり、異業種からの参入により従来の産業構造が大きく変わる可能性もあります。
従来の内燃機関の自動車は10万点以上の部品から構成された組み立て加工品です。一方、EVは2~3万点の部品で出来上がるそうです。産業構造が変わるということは、一部産業は衰退し雇用にも大きなインパクトを与える可能性が考えられます。
そこで、一部の日本の自動車メーカーでは、カーボンニュートラルへの取り組みについて、単にBEVやFCEVにスイッチするのではなく、別のやり方を「あるところ」でチャレンジしています。
耐久レースは巨大な実験場
ちょっと、脱線しますが、自動車レースの世界では、以前より環境問題を考えた取り組みが始まっています。
アメリカのインディカーレースにおいては、燃料について2012年からエタノール(生物由来)85%・ガソリン15%の混合燃料が使用され、2023年からは100%再生可能な燃料でレースを行うための準備が進んでいます。フォーミュラEでは、化石燃料を使用しない電気自動車によるフォーミュラカーレースも行われています。
これらのレースで培われた技術が、市販車に反映されています。
日本国内でも、2021年からスーパー耐久という国内レースにおいて、カーボンニュートラル化の実証実験が始まっています。
排気量や駆動方式によりST-XからST-5までの9クラスに分類されて競技します。その中で、ST-Qクラスというカテゴリーにて、国内自動車メーカー数社が参加して、競技を行いながら実証実験を行っています。
https://supertaikyu.com/teams/
このクラスに参加している7台のうち
トヨタ 水素燃料エンジンを搭載したカローラスポーツ(№32)
カーボンニュートラル燃料を使用したGR86(№28)
マツダ ユーグレナ製のバイオディーゼル燃料を使用したMAZDA2(№55)
スバル カーボンニュートラル燃料を使用するBRZ(№61)
日産 カーボンニュートラル燃料を使用するZ(№230)
が、5台がカーボンニュートラル化への実証実験を行っています。
特に№32号車については、
ガソリンの代わりに水素を燃料とする水素エンジンで、動力を動かしているのが特徴です。
同じ水素をエネルギーとするFCEVではなく、ほぼ既存の構造と同じエンジンを水素で燃焼させることで動力を得ており、「二酸化炭素を排出しない内燃機関」として、BEVやFCEVへの転換だけにこだわらない、環境と産業構造の両方を考えた車両となっています。
この車両をドライビングする一人がトヨタ自動車の豊田章男社長であることからも取り組みの真剣さが分かります。
少しずつ変わる、少しずつ始める
先ほど挙げた5台の車両は、内燃機関という構造を変えずに二酸化炭素の排出を抑える方法を模索しています。24時間走行し続けたり、高速で走り続けることで、様々なデータを収集し、市販化に向けて実験を続けています。
エンジンの出力の面では、従来のガソリン車に近づきつつありますが、今後の課題としては、補給設備やその流通などの整備とコストの部分になるかと思います。
例えば、水素ステーションは、少しずつ設置が増えていますが、まだまだ足りません。(2021年2月末時点で全国に137箇所:資源エネルギー庁資料より)
BEVについては選択できる車種が増えてきました。充電設備も急速充電器でなければ、イニシャルコストは抑えられます。
ただし、買い替えとなるとある程度の資金が必要になりますし、航続距離については、技術が進んでいるとはいえ、化石燃料の車両の方がまだ安心感があるかと思います。
確かにカーボンニュートラルということは、取り組む必要に迫られていることです。ただ、個人個人が少しずつできることから始めていけば良いのではないかとも思っています。
車の運転に関していえば、燃費の向上が二酸化炭素の総排出量を抑制につながると思います。
簡単に言ってしまうと
① 急加速を控え、ふんわり発進に心がける
② 不要な荷物を積みっぱなしにしない
③ 不必要に速度を出さない
の3点と考えられます。
①については、
燃料を最も消費するタイミングは、停止時点から発進する際や急加速をする時といわれています。STOP&GOを多用する市街地走行と高速道路走行で、燃費に差が出るのは、「発進時の加速」の機会が市街地走行の方が多く、そのたびに燃料を使うからです。
したがって、発進時はEVモードやクリープ現象を上手に使い、すこし速度がついてからアクセルを開けることで、燃費を良くすることができます。
②については、
重い車両と軽い車両では使う燃料の量にも差がでる。つまり排出される二酸化炭素の量にも差が出ることになります。
ちょっと脱線しますが、同じ排気量3,500㏄のレクサスLS500h(GVF50 車両重量:2,200~2,340 kg)と、トヨタクラウン(GWS224 車両重量:1,860~1,910 kg)のそれぞれのWLTCモード燃費(カタログ上)は、LS500 hが13.6 km/Lに対し、クラウンは16.0 km/Lと、重量の軽いクラウンの方が燃費の良いクルマとなります。
したがって、同じ距離を走った場合、排出される二酸化炭素はクラウンの方が少なくなります。不要な荷物を積んだまま走行すれば、車両重量の重い車を運転することと同じになります。必要に応じて荷物を調整することを心がけることで、二酸化炭素の排出抑制につながります。
③に関して
一説では、高速道路において最も燃費の良い速度帯は70~80km/hといわれています。この理由は、最も高いギアにおいてエンジン回転数を1200~1500回転で動かすのが最も燃費の良い状態となり、その速度がだいたい70~80km/hであるからです。
これ以上の速度で走行すると空気抵抗の影響が増え、速度維持のためエンジン回転数を上げなければならず、燃費面では逆効果となります。
不必要なスピードは、二酸化炭素の排出にも悪影響です。
①~③のことは、ショーファーサービスの役員運転手の運転の基本につながっています。
お客様に快適な時間と安全な空間を提供する役員車を運転するショーファーサービスでも運転技術の面において、①や③のことを指導します。またお客様のお車を管理するという面においては、②についても、トランクルームや車内もお客様のものという観点において、私物や業務において常に必要としないものを置かないように指導しています。
実は、基本的なことがカーボンニュートラルにもつながるのだと気づいた一件でした。