お酒と運転について:後編(ショーファーサービスのコラム 2021.10.1)
ようやく暑い日々から解放され過ごしやすくなり、昼間の蝉時雨から夜中の虫の音を耳にするようになりました。
そして、食欲の秋!(体重計に乗るのが怖い…)
前回に引き続き、アルコールと自動車の運転への影響に関して、話をしたいと思います。
さて、アルコールはどのように、どれくらいの時間で抜けていくのでしょうか?
正しく表現すると、人体がアルコールを無害なものに分解していく流れについてのことです。
- アルコールは体内に長く残っている。
- 口から摂取したアルコールは、20%が胃で、80%が小腸で吸収されます。そして血管を通って肝臓に集められ、酵素によって酢酸に分解されます。
大雑把に分解の流れは、
アルコール
↓分解(ADH:アルコール脱水素酵素)
アセトアルデヒド
↓分解(ALDH:アセトアルデヒド脱水素酵素)
酢酸
※酢酸に分解されることで、ようやく無害化
↓(筋肉・脂肪組織)
二酸化炭素(CO2)と水(H2O)
↓(呼気・尿)
体外に排出
お酒を飲んだ後で水が欲しくなるのは、もともとアルコール自体の非常に強い利尿作用と分解時の脱水素酵素の影響で体内が水分不足(脱水状態)となり、それをを補うためなのです。
では、どのくらいで分解されるのか?ということになります。
みなさんは、ざっくり『4時間』とか『8時間』と思ってはいませんでしょうか。
正確にいうと、『1単位につき、成人男性で飲み終わってからだいたい4時間』かかります。
女性、お酒に弱い人や高齢者の場合、『1単位につき、飲み終わってから5時間』くらいが目安だそうです。また、体重・体調・体質によって個人差があります。
「1単位につき」なので、2単位ならば8時間、3単位ならば12時間かかります。
ただし、睡眠中は臓器もスリープ状態となるため処理時間がさらに伸びてしまいます。
さっきから、出ているこの「1単位」という単語は、純アルコールに換算して約20グラム(g)となる酒量を指します。
計算式は、『お酒の量(ml)×[アルコール度数(%)÷100]×0.8 = 20g』となります。
0.8は比重の数値です。この計算式を用いて1単位当たりの酒量を計算すると
アルコール度数5%のビールの場合、20グラム÷0.8÷[5%÷100]=500mlが1単位となります。同様に、
7%のチューハイの場合は、357ml
15%の日本酒の場合は、166.6ml(0.9合)
25%の焼酎の場合は、100ml(0.55合)
が1単位となります。
今回のコラムを書くにあたり色々調べてみると、アルコール量を計算してくれるインターネットサイトが存在しています。(世の中便利ですね)
『アルコール濃度計算機』で検索してみてください。
飲んだお酒の量からアルコール量(g)から何単位になるのか、どれくらいの時間、体内にアルコールが残っているのか、皆さんも一度試してみてください。 - 飲酒運転に関する罰則
- さて、ここからはシビアな話に。
道路交通法第65条第1項には
『何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。』と酒気帯び運転等の禁止をうたっています。
違反した場合には、道路交通法違反による罰則と行政処分が下されます。
(1)運転者に対する処罰
[罰則]
①酒酔い運転:5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
②酒気帯び運転:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
[違反点数]
①酒酔い運転:35点
②酒気帯び運転:25点(呼気1ℓ中のアルコール濃度0.25㎎以上)
③酒気帯び運転:13点(呼気1ℓ中のアルコール濃度0.15㎎以上0.25㎎未満)
(2)運転者以外の周囲の責任についての処罰
[車両提供者に対する処罰](運転者と同じ処罰になります)
①運転者が酒酔い運転:5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
②運転者が酒気帯び運転:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
[酒類の提供・車両の同乗者]
①運転者が酒酔い運転:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
②運転者が酒気帯び運転:2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
焼酎を4合(721.6ml)飲んで、20時間後に運転しても酒気帯びで検挙されたケースもあるそうです。このケースの場合、計算上7単位以上になるため、28時間以上経過しないとアルコールが残った状態になっているのです。
話が脱線しますが、『3年以下の懲役又は50万円以下の罰金』という罰則、暴行罪(刑法第208条)の罰則より重いんですよ。「お酒を飲んでハンドル握った」その時点で!
いかに『飲酒運転』という行為を重く見ているかを示していると思います。
前回のコラムでも挙げた八街市のトラック運転手による死傷事故は、より罪の重い、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(通称:自動車運転処罰法)の危険運転致死傷罪で起訴されています。(2021年7月19日時点)
危険運転致死傷については、同法の第2条と第3条に規定されています。
同法第2条では、
次に掲げる行為により、人を死傷させた場合は本条が適用されるとなっています。
・アルコール又は薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
・進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
・進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
・人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、重大な交通の危険を生
じさせる速度で自動車を運転する行為
・赤信号等を殊更無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
・通行禁止道路を進行し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
罰則について、致死の場合は1年以上の懲役(最高で20年)。致傷の場合は15年以下の懲役となっています。
また、同法第3条では、
アルコール又は薬物若しくは運転に支障を及ぼすおそれがある病気の影響により、正常な運転に支障が生じるおそれのある状態で自動車を運転し、よって正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた場合に適用され、罰則については、致死の場合15年以下の懲役、致傷については12年以下の懲役と定められています。
八街市のトラック運転手による死傷事故における影響は、各方面に及んでいます。今後裁判によりどういう判断が下りるのか、今後、どうなっていくのか、気になるところです。 - 『免許』の意味
- 今回、前・後編にわたりお酒と自動車の運転についてコラムを書きました。
前編でもお伝えした通り、ショーファーサービスではドライバーの入社時研修のうち、座学研修の期間に飲酒運転に関する講義を行います。
https://www.cs-driver.co.jp/recruit/requirements/
職業で自動車を運転する立場として、意識付けしてもらうためです。
ただ、職業云々にかかわらず『免許』という言葉の意味をみなさんに確認してもらいたいと思っています。
デジタル大辞泉で『免許』を調べると最初に、
『ある特定の事を行うのを官公庁が許すこと。また、法令によって、一般には禁止されている行為を、特定の場合、特定の人だけに許す行政処分。「免許を取得する」「免許がおりる」「運転免許」』
となっています。
『法令によって、一般には禁止されている行為を、特定の場合、特定の人だけに許す行政処分』つまり、道路交通法をはじめとした法律で、お酒を飲んだ後で運転してはダメということを理解し実行することで、自動車の運転が許されているということを、各ご家庭で、職場でもう一度認識してほしいと思っています。
今年の新酒も店頭をにぎわす時期です。おいしさを楽しみつつ、運転をする際には、絶対にアルコールを摂取しないと心に誓ってください。
【追記:2022.3.28】
前編にて挙げた八街市での死亡事故を起こしたトラック運転手に対し、3月25日千葉地方裁判所は、懲役14年の判決を言い渡しました。
自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われ、「危険性を顧みない運転態度は最悪で、強い非難に値する」として、求刑懲役15年に対し懲役14年の判決となりました。